わたしの本のこと

美術の絵本

ゴッホの星空 フィンセントはねむれない

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バーブ・ローゼンストック 文  メアリー・グランプレ 絵  ほるぷ出版

 

ゴッホの少年時代からの歩みと、晩年の名画「星月夜」に焦点をあてた伝記絵本です。

キーワードは「フィンセントは ねむれません…」。

 

あまりにも面白く美しい物事に心がおどると、ねむれなくなります。

悲しみや焦り、怒りに心がさわいでも、ねむれなくなります。

なにかに激しく熱中しても、やはりねむれなくなるでしょう。

 

フィンセント・ファン・ゴッホの一生は、その連続でした。

絵本の作家バーブ・ローゼンストックによれば、ゴッホは夜型人間だったそうです。

明るい色彩のひまわりや南仏の景色の絵を思いうかべると意外な気がしますが、2008年には「星月夜」をお宝として所蔵するMOMAニューヨーク近代美術館で「ゴッホと夜の色」と題した展覧会も開かれています。

 

ゴッホが夜に目をさましていて、夜の時間を絵で表現したという具体的な意味もさりながら、バーブさんの献辞には、

 

  闇を知り、なおも 光をもとめる人たちへ

 

とありますから、「夜」とは心の闇やフィンセントの生き辛さも含んでいるのでしょう。

豊かな才能をもちながらも、まわりとうまく関われない子どもや若者は今も多くいます。

親や教師にも、その扉をあける方法がわからないことは、しばしば。

 

小学中学年くらいからたのしめるシンプルな絵本ですが、奥行きは深いと思います。

著者や訳者のあとがきも、読んでくださいね。

 

メイキングとちゅうの私の呟きは、こちらからどうぞ。 

 その1 http://chihiro-nn.jugem.jp/?day=20180413

 その2 http://chihiro-nn.jugem.jp/?eid=49

 その3 http://chihiro-nn.jugem.jp/?eid=56

 

 

編集は、絵描きとしての話もできる関谷由子さん。

装丁は、青の魔術師、森枝雄司さん。

にぎやかなえのぐばこ カンディンスキーのうたう色たち

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バーブ・ローゼンストック 文  メアリー・グランプレ 絵  ほるぷ出版

 

抽象絵画をみるのは好きですか?

 

もしお好きなら、きっと楽しめるはず。

カンディンスキーが子どもの頃に色のささやく音をきいて、やがてその音を重ね、響かせあって重厚な交響曲をかなでる絵を描くようになった過程に共感できるでしょうから。

 

でも、もし抽象絵画ってよくわからないから苦手という方であっても、きっと楽しめるはず。

カンディンスキーは抽象絵画の父とよばれていますが、なぜこんな絵を描きはじめたのかが、とてもわかりやすく説き明かされています。

かたちの無いものを絵にしたかったんですって。

なにが描いてあるかわからなくて当然ですよね。

ぼんやりと心をひらいて絵の前にたたずみ、なにかを感じたらそれでOK。

なにも感じなかったら、波長が合わなかったということ。好きな音楽をさがすのと一緒です。

ね、気が楽になったでしょう。

 

そしてもし、べつに絵に興味はないという方であっても、やはりオススメです。

名家の跡取り息子で、頭脳明晰 (しかもイケメン)。

非の打ちどころのないお坊ちゃまだったカンディンスキーは親の期待どおり、法律家として出世街道を進んでいたのに、すべてを投げうって一から絵の勉強に身を投じます。

とても遅いスタートでした。

なんかしっくりこない…という違和感を原動力に、人生の舵を大きく切った遅咲き青年の物語でもあります。

 

絵画とおなじく、絵本も、さまざまな楽しみ方を歓迎いたします。

そうそう、これから、おなじ作者と画家のコンビによる、ゴッホ少年の絵本を翻訳します。

芸術の秋あたりに出版できるといいな。

いろのダンス

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アン・ジョナス 作絵  福武書店

 

ダンスの発表会です。

赤、黄色、青、そして白黒のレオタード姿の四人の子どもたちが、それそれの色の薄布をもって舞台に登場します。

 

  それでは ダンスを はじめます

  あか きいろ あお

  だいだいいろは あかと きいろを まぜた いろ

  あおは おやすみ

 

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  みどりは きいろと あおを まぜた いろ

  むらさきは あかと あおを まぜた いろ

 

こんなぐあいに、三原色による混色が わかりやすく描かれていきます。

 

  あかに あかを まぜても あか

 

というページもあり、単色濃淡のベールもすてき。

反対に、ぜんぶの色をまぜると…

 

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水彩絵の具のパレットや水入れが暗く濁った経験は、だれにもありますよね。そうか、三原色をまぜたからなんだねと納得できることでしょう。

勘の良い子は、茶色って、赤と青と黄色で作れるんだ!?と 気づくかも。

白や灰色、黒をまぜたときの変化も、ダンサーたちのベールで表されています。

 

はい。

これは徹頭徹尾、実用書、あるいは技法書であります。子どものお絵かきのための。

小学校の学級文庫に収められ、水彩のお絵かきの時間になると「むらさきって、どうやって作るんだっけ?」「いろのダンス、いろのダンス!」と、みんなが見にいく話をききました。

なにより、とてもとても美しい。

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 子どもたちに図工や美術を教えるのは、じょうずな絵をかかせることが目的ではありません。

きれいだなあ…と  心がうごく一瞬があれば、目的は半分以上達成されたというべきでしょう。

それにくわえて、じぶんでもこういう美しいものをうみだしたいきもちが芽ばえたなら、ほぼ目的完遂。

そのとき紙の上の結果に満足しなかったとしても、まったくかまいません。その子は一生、美しいものへの憧れを胸にいだく人になるでしょうから。

教育って、未来への種を蒔くことですものね。

 

とまあ、それくらい大好きな絵本ですが、絶版です。しくしくしく…。 

石の巨人 ミケランジェロのダビデ像

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ジェーン・サトクリフ 文  ジョン・シェリー 絵  小峰書店

 

ミケランジェロのダビデ像は、まぎれもなく、ルネッサンス芸術の大傑作のひとつです。

でも、はじめから人類の至宝だったわけではありません。

ばかでかいわりに質の悪い大理石の塊として、フィレンツェの街中にころがされたまま、40年近く邪魔物扱いされていたそうです。

都市国家フィレンツェの議員たちがダビデ像を作らせるために購入した石らしいのですが、予算をけちったのかしらね…。

何人もの彫刻家が、ちょこっと彫っては放りだし、あのレオナルド・ダ・ビンチでさえ、石をちらりとみるなり「おことわりだな」と言ったとか。

 

その大理石に挑んだのが、当時26歳のミケランジェロ。

議員たちは、ほっとしたそうですよ。少なくとも巨大な石の処分ができそうだと。

ミケランジェロは約3年の歳月をかけて、今にも動きだしそうな若きダビデを彫りだし、みんなを感動させました。

500年以上も前のお話です。

 

中世フィレンツェの風景や人々の服装、街のざわめきなどが生き生きと描かれた絵本です。

重機がない時代に彫刻家がどうやって巨大な石像を彫り、運搬し、設置したのかも、コマ割りの絵で詳しく見せてくれます。

この絵本を読んだ後にダビデ像をみたら、2倍も3倍も楽しめるはず。

 

画家のシェリーさんはイギリスの方ですが、日本で21年間暮らしていたので日本語も堪能です。

「石の巨人」の絵をもっとごらんになりたい方は、シェリーさんのHPをどうぞ。

https://www.jshelley.com/projects/4232660#1

日本語のブログもあるんですよ!

http://shelleyjapan.blogspot.jp

 

 

 

ペペットのえかきさん

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リンダ・ラヴィン・ロディング 文  クレア・フレッチャー 絵  絵本塾出版

 

ジョゼットは、芸術の都パリに住んでいる女の子。

ジョゼットの家には、家族の肖像画がかけてあります。

おかあさんの絵、おばあちゃんの絵、おじいちゃんの絵、おねえちゃんたちの絵、犬のフリゼットの絵。

おや、たいへん。ジョゼットのうさぎのぬいぐるみ、ペペットの絵がありません!

ジョゼットにとってペペットは、かたときも離れられないほど大切な仲良しなのに。

パリで一番じょうずな絵描きさんにペペットの絵をかいてもらわなくっちゃ。

 

最初にであった縞シャツの絵描きは、どうやらピカソさん。

自信たっぷりに、耳が3本、鼻がふたつあるペペットを描いてくれました。うーん、なんか違う…。

 

つぎに出会った自転車のハンドルみたいなヒゲの絵描きは、どうやらダリさん。

ぐんにゃり溶けたペペットの絵をかいてくれました。うーん、これも違う…。

 

つぎは、どうやらシャガールさん。

それから、どうやらマティスさん。

でも、みんな、なんか違うのです…。

 

それでもジョゼットは、最高にかわいいペペットの絵を飾ることができました。

さて、だれが描いてくれたと思いますか?

 

たしかにピカソもダリもシャガールもマティスも、1920年代のパリでくらしていたようです。

彼らがモンマルトルの広場にイーゼルをたてて、ぬいぐるみのうさぎの絵を描いたかどうかは不明ですが、ジョゼットがみつけた答えには、絵を描くことの本質がふくまれていると、わたしは思います。

 

 

おえかきウォッチング 子どもの絵を10倍たのしむ方法

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理論社

 

絵本ではありません。物語でもありません。

絵を描く子どもたちの近くにいる方のための「実用書」のつもりです。

かつて、明星大学で美術教育の講師をしていた5年間に考えたことや、学生たちとともに作り上げた愉快なワークショップをまとめました。

幼い子どもが描くぐちゃぐちゃの絵は、あなどれませんぞ。へえ〜と感心するようなロジック、そして野の花のような成長の道筋があるのです。

それを知ると、子どもの絵を見ることがたのしくなります。

バードウォッチングをするときのポケット図鑑のように使っていただければうれしいな。

子どもたちの絵を大人がたのしむことで、ゆたかな時間がうまれ、なによりの創造性教育になると信じます。

絵を描くことに苦手意識をもつ方や、子どもに絵をどう教えたらよいのかわからない方にこそ、読んでいただきたいと願っています。

 

目次

 1   はじめての絵は、いつ?

 2   げんきな なぐりがき

 3 マルのおはなし

 4 うごきだすマル

 5   なんでもかけるよ

   6   地に足がつく

 7 へんてこりんな絵!?

   8 またおんなじ絵〜!?

   9 男の子の絵・女の子の絵

  10 色がすき? 線がすき?

  11 めざめよ触覚!

  12 現代絵画は子どもの絵?

  13 じょうずな絵って、なんだろう?

 

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