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デビッド・マッキーの絵本
せかいでいちばんつよい国
デビッド・マッキー作 光村教育図書
原書が出版されたのは2004年。
その後、作者のデビッドは来日したときに教えてくれました。
ブッシュ政権の中東政策に抗議をするために、わずか10日かそこらの猛スピードでこの本を作ったのだと。
けれどその下地には、第二次世界大戦の勝者としてイタリアに駐留し、すっかりイタリア文化に魅せられて帰国した兵士のエピソードがあるとも。
普遍的な問いかけを含む1冊です。
メルリック まほうをなくしたまほうつかい
デビッド・マッキー 作絵 光村教育図書
心やさしい、まほうつかいのメルリックは、人間たちのためにせっせと魔法をつかいます。
王さまのプールの温度管理や、お城のペンキぬりから、一般家庭の料理、洗濯、裁縫、畑仕事、靴の修繕まで。
だから忙しいのはメルリックだけ。ほかの人は、のんべんだらりと暮らしていました。
ところがあるとき、メルリックの魔法が底をついてしまったのです。
あらまあ、魔法って有限だったんですね。
魔法に頼りきっていた人々の大混乱がユーモラスに描かれます。
作者のデビッド・マッキーは「ぞうのエルマー」で有名ですが、キャラクターグッズの画家ではありません。
エッジのきいた風刺と、社会への問いかけが彼の本領です。
この物語が最初に生まれたのは1970年でした。
日本でも『まほうをわすれたまほうつかい』(安西徹雄 訳・アリス館)として紹介されましたが既に絶版。本国イギリスの元の本も絶版です。
するとマッキーさんは、すべての絵を新たに描きなおし、2012年に新刊絵本として出版したのです。当時77歳。
なんとしてもこの物語を蘇らせ、次代に手渡そうとした熱い思いが感じられます。
「魔法の力」とは、いったい何でしょう。
震災直後の私の脳内では、ただちに電力と原子力に変換されました。
けれどほかにも、いろいろなものに置き換えることができそうです。復興予算や途上国への支援、石油、財力、ITと考えることも可能かもしれません。
さて、わたしたちは、生活を楽にしてくれる「魔法の力」と、どう向きあっていけば幸せになれるのでしょうか。
さんびきめのかいじゅう
デビッド・マッキー 作絵 光村教育図書
石ころだらけの島に、赤いかいじゅうと青いかいじゅうがすんでいました。
石ころをかたづければ快適なくらしができるのだけど、2匹は、なまけもの。
あるひ、ボートが流れつきました。乗っていたのは、きいろいかいじゅう。
すんでいた国が地震でめちゃめちゃになり、命からがら逃げてきたという きいろいかいじゅうは へんてこな言葉で 懇願します。
「おねがい、とち、ちょっぴり ください。わたし、なんでも しますです」
よそもの、おことわり!
赤いかいじゅうと青いかいじゅうは、きいろいかいじゅうを追いだそうとしましたが、いいことを考えつきました。
そうだ、こいつに 石ころをかたづけさせちゃおう!
きいろいかいじゅうは、せっせと働きます。
そしてみごとに してやられた 赤いかいじゅうと青いかいじゅう。
さあて、このあと三びきは いっしょに仲良くくらせるのでしょうか…?
お察しのとおり、これは移民や難民の問題をテーマにした絵本です。
「ぞうのエルマー」で有名になったイギリス人作家デビッド・マッキーは、4カ国語をあやつり、異なる文化背景をもつ女性と家庭をもって、つねに社会的な視点から絵本を作りつづけた作家です。
この絵本が出版されたばかりの2005年の夏、わたしは来日したマッキーさんと夕食をともにしました。
日本酒をのみ、お箸でじょうずにサラダをたべるマッキーさんがいいました。
「おいしいサラダを作るコツはね、歯ざわりのちがうものをまぜることだよ。
いろんなのがまじっていてこそ、おいしいんだ」と。
よそ者を警戒し、恐れるきもちはだれにでもありますが、とりわけ近年、世界的にひろがる排他主義を感じます。
でもこの本、出版から12年目に絶版がきまってしまいました。
ざんねんだなあ…。