わたしの本のこと

荻原規子の挿絵担当

これは王国のかぎ

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荻原規子 作  理論社

 

忘れられない瞬間というのはあるもので、出版されたばかりの『空色勾玉』を書店でみつけて手をのばしたときのことを、切り取られた画像のようによく憶えています。

その瞬間を起点として子どもの本の仕事をするようになったので、ご本人は与り知らぬこととはいえ、荻原規子はわたしにとって別格の作家です。

 

だから、その後も「勾玉シリーズ」を書いていた荻原さんが、ふと横道にそれて(?) 『これは王国のかぎ』を書き、挿絵をわたしにと指名してくれたときには舞い上がりました。

『ふしぎをのせたアリエル号』の挿絵を気に入ってくれたというんですもん。

はりきっちゃいましたよー。

 

挿絵をみて、読みたい本をきめる子どもは多いものです。わたしも、そうでした。

挿絵って、ほんと大切。そして難しい。

(なのに報酬が少ない…。挿絵画家の質と待遇改善委員会を発足させたいくらいだ)

 

荻原規子さんとは、その後、何度もお目にかかっているけれど、いつだって初恋の人に同窓会であうみたいにドギマギして落ち着きません。

 

編集は芳本律子さん。

装丁は太田大八さん。

太田大八さんの装丁なんて畏れ多いですよね。でも表紙の背景色はこの色ではなく、深い赤にしてほしかったの…涙。

 

グリフィンとお茶を

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荻原規子 著  徳間書店

 

…とまあ、そんなわけで特別なヒトである荻原さんから、徳間書店の文芸PR誌「本とも」に連載する原稿に絵を描いてといわれたときは、一も二も無く「ハイ」と頷きました。

連載当時のタイトルは「アニマ・アニムス・アニマル」。

荻原さんが毎回、動物のでてくる物語についての随想を書くというものでした。

 

私は送られてきた原稿をよんで、ひぇ、こんどは虎かよ、竜かよ、カエルのケロちゃんかよと慌てて資料をさがし、読書家の荻原さんがとりあげる本すべてを意地で読破し、ちゃっちゃか絵をかくこと20ヶ月。

荻原さんとの仮想対話がたのしい仕事でした。

〆切はいつもスリリングでしたが…。

 

その連載をまとめた一冊です。

荻原規子ファンは必読ですよ。

 

編集は村山晶子さんと、上村令さん。

装丁は百足屋ユウコさん。

表紙(カバーをめくった本の本体)の青が理想としていたウェッジウッドブルーよりだいぶ濃くなってしまったのが残念ですが、お洒落な大人カワイイ本になりました。

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