わたしの本のこと

翻訳絵本

おじいちゃんのねがいごと

おじいちゃんのねがいごと

パトリシア・マクラクラン 文  クリス・シーバン 絵  光村教育図書

 

野鳥を愛したおじいちゃんが老いて次第に視力を失い、亡くなるまでの日々が、孫娘の回想によって綴られています。

 

編集者氏が帯のテキストに「鳥を愛する祖父をめぐるささやかなできごと、そして別れ。」と書いてくれたとおり、ほんとうに、ささやかなできごとばかり。

 

パトリシア・マクラクランの文章は、そっけないほど淡々としています。

翻訳者としては「もちょい盛り上げましょうか?」と提言したくなるときもあるけれど、そうしないのがマクラクランです。

 

抑制の効いたひとこと、いやむしろ、あえて語られない物事や行間に、なんと深いものが流れていることか。

おじいちゃんとおばあちゃんの、夫婦としてのありかた。

若い訪問看護師への、さりげない思いやり。

そしてなにより、もしかしたらちょっと生き辛いかもしれない、でも、うまくいけばきっと素晴らしい人生を歩むであろう幼い孫への、深い愛情。

 

人の命と営みは、ささやかで、儚い。

それを包む自然は、雄大で美しく、厳しい。

しずかな音楽を聴いているようなきもちになります。

 

83歳になるパトリシア・マクラクランですが、テキストを深読みして迷路に入ってしまった私が質問状を送ると、すぐに返事をくださいました。

滋味豊かな作品を、まだまだ世に出してほしいものです。

 

クリス・シーバンの絵本を翻訳するのは2回目ですが、この人の絵は黄昏色が綺麗。

 

翻訳途中のブログは、こちらからどうぞ。詳しい内容のチラ読みもできます。

http://chihiro-nn.jugem.jp/?eid=134

 

編集は、相馬徹さん。

「くまちゃんがちいさくなっちゃった」のときは、すべてリモート打ち合わせでしたが、今回は、いちどだけ、対面打ち合わせができました。

やっぱり、対面で会えると、そのあといろいろ楽ちんだなあ…。

人となりがわかって安心感があります。

 

装幀は、森枝雄司さん。

年季の入った あうんの関係なので、何があっても処理してくださる安心の大船です。