わたしの本のこと

翻訳絵本

ちいさなしまの だいもんだい

ちいさなしまの だいもんだい

スムリティ・プラサーダム・ホールズ 文  ロバート・スターリング 絵  光村教育図書

 

 あるところに、どうぶつむらが ありました。

 ひつじ、うま、うし、ぶた、あひるや がちょうたちが

 それぞれ すきなところに いえを たて、

 めいめい とくいな しごとを うけもって、

 たすけあいながら くらしていたのです。

  

ところがあるとき、ガチョウたちが文句をいいはじめます。

よそものがいない昔のほうが、ずっと住み心地がよかったんですって。

むかしは 林檎がもっと赤くて、草ももっと緑だったんですって〜。

あの頃にもどろう!

古き良き時代を取り戻そう!

声高に、議会で熱く演説をするガチョウたち。

大声でまくしたてられると、つい納得しちゃうってことありますよね。

 

かくして民主的な多数決の結果、よそものの排斥が決定。

ガチョウと同じ島でくらすアヒルたちは反対をしたのですが、少数派の意見は通りません。

ちいさなしまは 鎖国状態となります。

 

さて、それからガチョウとアヒルたちに何が起きたでしょう?

くすくすにやにや笑いながら読みおわると、胸にツブツブと何かが残ります。

それはたぶん、問題提起のタネ。

 

この絵本は、2019年秋にイギリスで出版されました。

イギリスのEU離脱がテーマです。

偏狭な自分主義をとなえるガチョウたちは悪者扱いですが、本音まるだしでユーモラスで、なんだか憎めない。

じつはわたくし、しぶんの心にもガチョウが住んでいることに気づいてしまいました。

100%アヒルだと思っていたのになあ。

だけどそれは、良い気づきのはず。

ガチョウの言い分にも耳を傾けられるアヒルをめざします。

 

新型コロナウイルス騒動は、わたしたちが人や物ばかりかウイルスまでも自在に、そして即時に往来するグローバルな時代を生きていることをあらためて意識させました。

地球人すべてが大きな運命共同体。

この時代を生きていく子どもたちといっしょに読んでほしい本です。

多数決で負けたアヒルですが、さいごの頁をみると、ガチョウよりアヒルの雛のほうが多いんですよ〜♪

 

 

編集は、鈴木真紀さん。

『せかいでいちばんつよい国』以来のおつきあいで、心の中のガチョウ談義も白熱。

装丁は、森枝雄司さん。

「訳者あとがきに大切なことが書いてあるから、文字はこれ以上小さくしません!」と主張してくれてありがとう。 

 

メイキング裏話は、こちらからどうぞ。

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