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翻訳絵本
ひみつのビクビク
フランチェスカ・サンナ作 廣済堂あかつき ME and my FEAR
ちいさな ビクビクは
わたしだけの ひみつの ともだち。
そう始まるので、イマジナリーフレンド(想像上の友だち)の話だろうとおもいますよね。
たしかに、おばけちゃんみたいな、かわいい友だちです。
でも、この友だちの名前は「ビクビク」。
主人公の女の子は、なにかを怖いとおもうきもちを、そう呼んでいました。
夜のくらがりや、吠える犬に怯えるたびに、心の中の「ビクビク」を意識するのです。
女の子は、じぶんの「ビクビク」を恥じてはいません。
怖いと思うからこそ慎重になり、ほんとうに怖い目にあうことを避けられるし、ちょっとずつ冒険をして強くなれるとしっているから。
聡明な子ですね。
ところがあるとき、ビクビクはむくむく、むくむく、大きくなりはじめます。
女の子が夜も眠れず、ごはんもたべられなくなるほどに。
やがて巨大化したビクビクにがんじがらめにされて身動きとれないほどまでに。
でもね。
このあとの展開が素敵なのですよ。
ようやくビクビクが手におえるサイズまで小さくなったとき、女の子は気づくのです。
誰もがみんな、ひみつの「ビクビク」をもっていることに…。
新学期や、転入学など、新しい環境に身を置く子どもたちに読んでもらいたいと思います。
この重苦しいきもち。おぼえがありますよね〜。
冷たい雨の朝なんて、ほんと、憂鬱だわぁ…。(-_-)
でもじつはこの絵本、もうすこし社会的な広がりをもってもいるのです。
あえて説明をくわえずにさらりと訳しましたが、女の子のビクビクが増大したのは…
そう。
どうやら女の子は、外国に転校したらしいのです。
親の海外転勤や留学だったのかなど、背景はかいてありません。
著者フランチェスカ・サンナの第一作が『ジャーニー 国境をこえて』であったことを思うと、無一物で命からがらやってきた難民だったのかもしれません。
今回、具体的な事情があまり語られないのは著者の意図のように思います。
それでこそ読者は気づくはず。「あれ? みんな、おなじなのかな」と。
クラス替えなどでじぶんの「ビクビク」に気づいた子どもたちが、心にひそむ怯えを客観的にとらえられるようになり、やがては、ニュースに流れる難民の子どもたちの状況をしなやかに思いやれる人になりますようにと、願いながら翻訳をしました。
冒頭にある献辞がすてきなんですよ。
じぶんのビクビクを子どもにみせたお父さん。
どんな事情があったのでしょう。
いろいろ想像すると切ないけど、かっこよくて勇ましいじゃありませんか。
そして本の裏表紙にかかっている帯は、こんなふう。
教育、そして外国人の子どもたちを支援する活動にたずさわる大人の方達にも、ぜひ読んでいただきたい一冊です。
制作途中のおはなしは、こちらから。
http://chihiro-nn.jugem.jp/?eid=64
http://chihiro-nn.jugem.jp/?eid=70
編集は、いつだって絵本をめぐる視野の広さに驚かされる ほそえさちよさん。
装丁は、中嶋香織さん。タイトル文字がちょこっと震えているところにご注目。