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翻訳絵本
あめあめ ふれふれ もっとふれ
シャーリー・モーガン 文 エドワード・アーディゾーニ 絵 のら書店
しばふに ふりそそぐ 春のあめは、ぽつぽつと やわらかな音。
どぶにおちる あめは、ぴちゃん、ぽちゃんと、ブリキをたたくような音。
まどべの子どもたちは、ひんやりしめった 土と草のにおいを くんくんと かぎました。
春の雨がふりつづき、女の子と男の子のきょうだいは、もう3日も、外で遊んでいません。
窓から外をながめて、戸外にいる人びとや、花や虫、小鳥や猫や犬をうらやましがるだけ。
わたし、ことりだったらいいのに。猫だったらいいのに。あのおばさんだったらいいのに。
ぼく、じどうしゃだったらいいのに。犬だったらいいのに。新聞配達のおにいさんだったらいいのに。
でもね、さいごには、とてもうれしいことがまっています。
うん、雨の日に、外であそべる子どもがいちばん!
絵本といっていいのかなと迷うほどには、文章が長めです。
でもアーディゾーニの絵が大きな牽引力となっているので、やはり絵本かな。
翻訳をしてたのしかったのは、感覚的な表現がとても多いことでした。
雨の日の水の流れや、空気の匂い、光の変化。
特別なことはなにも起きませんが、おとなにとっては幼い日の鋭い感覚がよみがえります。
子どもたちにとっては、かれらが毎日つつまれているふしぎな喜びに、言葉をあてはめる心地よさへとつながるのではないでしょうか。
アーディゾーニの絵は、もちろん、地味ですとも。
それゆえにむしろ、多くのことを思い出させてくれるのです。
この味わいを理解してくれる読者と版元のおかげで細く長く版を重ねて、14年間で11刷り。
こういう売れ方が、いちばんうれしい。
編集は、鈴木加奈子さん。
装丁は、丸尾靖子さん。