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エロール・ル・カインの絵本
かしこいモリー
ウォルター・デ・ラ・メア 再話 エロール・ル・カイン 絵 ほるぷ出版
まずしい三姉妹の末っ子モリーが、知恵と勇気で人食い大男をだしぬいて、幸せをつかむイギリスの昔話です。
男の子が主人公の類話もあったようですが、いつしか女の子版が定着したとか。
昔話は、再話者によって、ずいぶん印象のちがうものになります。
ジェイコブズによる再話は骨太で迫力たっぷり。「おはなしのろうそく」(東京子ども図書館)に収められた松岡享子さんの訳でどうぞ。
いっぽう、この再話をしたデ・ラ・メアは幻想物語の語り手、そして詩人なので、細やかな描写が特徴。文章もかろやかでリズミカルです。
そこへさらに、ル・カインの優美でありながらユーモラスな絵がくわわると…。
大男は、憎めないおまぬけキャラに。寝るときには、ピンクのボンボンのついたキャップをかぶってるんですよ。きっと、おかみさんの手編みですね。
それに王子さまたちの、たよりないことといったら…。
最後の闘いにでかけるモリーを見送る王子なんて、ポケットに手をつっこんで、柱に寄りかかって、もじもじしてますもん。ほんとに彼でいいのか、モリー!?
いや、モリーも逡巡したらしく、
モリーは末の王子をみて、にっこりわらい、あわてて目をそらして、まゆをしかめました。
けれど、やっぱりわらって、「やってみましょう」といいました。
…なんて心理描写(?)があって、わらえます。
勇気があって、かしこくて、大男への捨てぜりふも決まっています。
きっとデ・ラ・メアもル・カインも笑いながら、皮肉をちくちく縫いこんだのでしょう。昔話の魅力は、いろんな解釈が成立するところですよね。
このかっこいいモリーが大男から剣をうばって逃げていく場面の未使用原画が「イメージの魔術師 エロール・ル・カイン」(ほるぷ出版)に掲載されています。
未訳作品の画像も豊富な贅沢な本で、わたしも文章を寄せ、ル・カインへの複雑な恋心を綴っています。
よろしければ、ごらんください。