わたしの本のこと

翻訳絵本

チョコレート屋のねこ

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スー・ステイントン 文  アン・モーティマー 絵  ほるぷ出版

 

小さな村に、チョコレート屋がありました。

チョコレート屋のおじいさんは、きむずかしくて、ひとりぼっち。けっしてわらいません。

お店も古ぼけていて、ほこりをかぶり、ほったらかし。

すべてが投げやりで、さびしくて、たいくつだったのです。

 

あるひ、おじいさんは、チョコレートでねずみを作りました。それをじっと見ていたのは、おじいさんのねこ。チョコレートねずみのしっぽをくわえて、こっそり隣の八百屋にもっていきました。

 

チョコレートねずみをたべた八百屋のおじさんは、なぜか心がうきうき。いいことを思いつきます。

ねこはチョコレートねずみをパン屋にも、花屋にも、もっていきます。

たべた人には、かならず、なにかしらすてきな考えがひらめきます。

そのひらめきが重なっていって、やがて村じゅうに笑顔があふれることになりました。もちろん、チョコレート屋のおじいさんにも。

 

アン・モーティマーの描く猫の絵は、猫好き必見。

ただし、チョコレートがたべたくなるのも必至なので、お覚悟を。(^_^;)

 

もうひとつの見どころは、巻末にあります。

細かい文字で、チョコレート数千年の歴史をぎっしり「チョコレートの話」。

これ、読み応えあるんですよー。

 

チョコレートの原料であるカカオが、古代文明の神々の食べ物だったってこと、しってました?

アステカ帝国の皇帝は、不老長寿の薬としてカカオ飲料を一日50杯ものんでいたそうですよ。

なんと、カカオ豆100粒で、どれい1人と交換できたんですって。

そしてカカオに砂糖をくわえた飲み物が17世紀末のヨーロッパ貴族たちの贅沢品となり、いまのチョコレートのように固形になって庶民がたべるようになったのは、産業革命のときです。

 

この1頁を翻訳するために、わたしは分厚い参考書を何冊も読破し、折しも国立科学博物館で開催されていた「チョコレート展」に編集者Sさんとともに足を運びました。Sさんとの打ち合わせは、有名なチョコレート専門店でショコラショーを飲みながらという甘いおまけつき。ふふふ。

この歴史をしると、チョコレートねずみのふしぎな力についても、なんだかわかるような気がします。

チョコレートの味わいが、ぐっと深まるので、ぜひご一読を

 

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