わたしの本のこと

翻訳絵本

ソーニャのめんどり

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フィービー・ウォール 作絵  くもん出版

 

ふわふわのひよこを三羽わたして、おとうさんがソーニャにいいました。

「ひとりで せわを してみるかい?」

 

ソーニャがよく世話をしたので、ひよこはすくすく育ち、卵をうんでくれるようになりました。

ところがあるばん、一羽がきつねに襲われてしまいます。

かなしみと怒りで混乱するソーニャをしっかりうけとめて、おとうさんは静かに話しはじめます。

もしかしたら、きつねにも、おなかをへらした子ぎつねたちがいるのかもしれないよ、と。

 

  おとうさんが ソーニャを かわいがるように、

  ソーニャは ひよこたちを かわいがっていた。

  きつねも おんなじなんだよ。だから いのちを かけて まもるんだ。

  ソーニャなら、きつねの きもちも わかるんじゃないかな。

 

若いアメリカ人作家の、1作目となる絵本です。

こっくりとした色彩。パッチワークのような手芸的で素朴な画風。

とりあえず「小動物の世話をとおして命の尊さを学ぶ本」であることにまちがいありませんが、作者の目線は、そのはるか向こうに投げられています。

ソーニャのおとうさんとおかあさんの肌の色は違います。

近年、とみに排他的なうごきのある世界のなかで、どこの国のどの世代の人びとにも、安直にじぶんの正義をふりかざすのではなく、ふみとどまって考えてほしいという強いメッセージを、わたしは受けとりました。

 

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