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エロール・ル・カインの絵本
三つのまほうのおくりもの
ジェームズ・リオーダン 再話 エロール・ル・カイン 絵 ほるぷ出版
ロシアの昔話を、若い頃にロシアで暮らしたイギリス人作家、リオーダンが再話した本です。
貧乏で子だくさんの弟が、金持ちでいじわるな兄さんに食べ物をもらいにでかけます。
愚直な弟には、ふしぎな力が味方をしてくれて、さいごには幸せになるという定番の物語。
飢えと寒さに苦しんだロシアの民衆が語り伝えたにちがいありません。
翻訳にあたって悩んだのが、食べ物でした!
それというのも、この原書は英語。再話者はイギリス人。
本にでてくるロシア料理が、イギリスの子どもたちが楽しめるようにイギリスの食べ物にすり替えてあったからです。
さて、どちらの国からも遠い日本の翻訳者であるわたしは、どうするべきか。
日本の子どもたちが違和感なくお話にとけこめる食べ物にはしたいけど、味噌煮とか団子に変換するわけにはいきません。
類話の日本語版はできるかぎり読みました。みなさん、ご苦労なさっていますね。
絵描きのルカインもイギリス人なので、全体としては、むかしのヨーロッパという感じがだせれば合格点でしょうが、とりあえず、ほんとうはどんなものなのかを知りたくてたまらなくなるのは翻訳者の職業病。
私のしってるロシア料理なんてピロシキくらい…。はて、いかなる料理なのか?
物語のロシア語版をグーグル翻訳で読み、懸案の料理とおぼしき単語をコピペで画像検索しましたが、よくわかりません。
そこで、担当編集者の石原野恵さんとともに、ロシアの素朴な家庭料理をたべさせてくれるというお店を訪れました。
日本人と結婚をしたロシア人女性が一人で経営しているので、日本語も堪能でしょうしね。
いかにも家庭料理らしいロシア料理をあれこれ食べ、お店に私たちしかいなくなった頃、カウンターにいるロシア人女性に話しかけました。
ところが…、ぜんぜん日本語が通じない!
四苦八苦の末にわかったのは、たまたま店番を頼まれた旅行中のご親戚ということでした。
でも、せっかく取材にきたのです。ロシア料理各種を平らげちゃったし…。
なんとかモトを取らねば。
身振り手振りの片言会話で、とりあえず(たぶん)いろいろ教えていただきました。
それによると(たぶん)、「ロシア料理といっても、なんたってロシアは広いからね〜、地域と民族によってぜんぜん、ちがうのよ〜〜」という、まことに雄大なお返事でした (^o^)
「だってほら、マトリョーシカの顔をみてちょうだい。肌や髪の毛、目の色がちがうマトリョーシカがいろいろ。これぜんぶ、ロシアなのよ〜」と、ずらりと並ぶマトリョーシカと、壁に貼ってあるロシアの地図を指さす彼女。
「こっちの顔は、この地域。あの顔は、ほら、このへんのロシアね」
「ほほお…」
「そもそも、マトリョーシカは、日本から来たのよ♪」
「へええ…」
石原さんと私の興味は大きくカーブを描いて(やや捨て鉢に)マトリョーシカへと向かいます。
だってこのお店、希望者にはマトリョーシカの絵付けも教えてくれるんですもの。
ほかには誰もいない店内で彼女と三人、小さなテーブルで片言会話を交わしながら、のんびりと絵付けをはじめた私たち。
ロシアならではの色づかいを教えてもらったりして、楽しかった。
まあね、広大なロシアの香りを肌で呼吸してきました、ってことで。
わたしのマトリョーシカは、秋田こまちっぽくなりました。