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翻訳絵本
ひとつぶのおくりもの
マーシー・キャンベル 文 フレンチ・サンナ 絵 あかつき教育図書
あるところに とても ひろい くさはらが ありました。
そこにすむ おとこのこは おばあちゃんが だいすきで、
おばあちゃんも おとこのこが だいすきでした。
ふたりは しあわせでした。
男の子は、毎日、おばあちゃんから沢山の贈り物をもらいました。
暖かなだっこや、愉快な大笑い、おいしいパンケーキ。
でも、おばあちゃんが授けてくれた贈り物には、男の子が手には持てないものがありました。
たとえば、どんぐりのように小さな一粒の命を、辛抱強く大きく育てる方法…。
この贈り物は、おばあちゃんがこの世を去っても消えません。
それどころか、男の子が父となり、また次の世代へと時が移ろっても受け継がれ、やがては血のつながりのない人びとへも広がっていきます。
昨今、テレビにうつるのは、大切なものが一瞬に破壊される映像ばかり。
心が潰れてしまいそう。
人の愛の力がどれほど強くてしなやかかを、どうか忘れないでと語りかけてくれる絵本です。
翻訳中に、画家のサンナさんが来日しました。
直に教えてもらった、たのしいヒミツをふたつ、お伝えしましょう。
絵本のなかには三つの時代が描かれています。
サンナさんは、それぞれの時代のテーマカラーを決めて着彩したそうです。
あえて年代を特定しなくてもよいのですが、ヒントもありますよ。
女の子が手にしているのは……?
……そう、たまごっち!
ここから世代を推定するのもたのしいですね。
もうひとつ。
表4と呼ばれる裏表紙は、大きなどんぐりの木がそれぞれの世代の家族を抱え込んで、ファミリーツリーのよう。
でも、サンナさんはちゃんと描いているのです。
この大きな木のはじまりとなった、小さな「ひとつぶ」を。
ほら……
地面の下の根っこの端に、ぽつんと白い丸。
まっさきに、この一粒に気づいたのは、編集者のほそえさちよさんでした。
サンナさんも、とても驚いていました。
原書の編集者や出版関係者をふくめ、それまで誰一人、気づかなかったそうです!
編集は、そんな愛と熱意の持ち主、ほそえさちよさん。
装幀は中嶋香織さん。
日本で出版されたサンナさんの本をすべて手がけてもらい、そのデリカシーと統一感を、サンナさんも絶賛していました。
とってもチャーミングなサンナさん。
来日のようすを書いた記事も、よろしければお読みください。
https://chihiro-nn.jugem.jp/?eid=173