わたしの本のこと

翻訳児童文学

おすのつぼにすんでいたおばあさん

ルーマー・ゴッデン 作  徳間書店

 

 むかしむかし、おすのつぼの家に、おばあさんがすんでいました。

 

…は? おすのつぼ、ってなに?…と、わたしも思いました。

どうやら、ビールの材料であるホップの乾燥所のようです。

狭苦しい塔のような建物で、その形が、当時お酢をつくるのに使われていた、黄色い釉薬をかけた壺とよく似ていたので、そう呼ばれたらしい。住居とするには、とても粗末なところです。

 

まずしくても、おばあさんは、日々のくらしに満足していました。

わずかな食べものを飼い猫のモルトにあたえてしまうので、おばあさんは、やせっぽち。

あるひ、おばあさんは銀貨をひろいます。

久々に、ごちそうがたべられる! 湖のほとりで、漁師から、とれたての魚をわけてもらったおばあさん。

ところが、魚が苦しそうに口をぱくぱくしているのをみると、かわいそうになって湖に返してしまいます。

 

じつはこの魚、湖の王さまだったんです〜。

お礼に、なんでも望みを叶えてくれるというではありませんか。

お礼なんていりませんよと、おばあさんは固辞しますが、やっぱりおなかがぺこぺこ。おそるおそる、夕飯をお願いしてみます。

するとまあ、ゴージャスなご馳走が山のように現れました。

 

おなかいっぱい。ああ、幸せ。

でも、食べすぎで夜の眠りが浅くなり、家の居住性の低さが気になりはじめました。

そこで魚に、せめてふつうの家に住みたいのだけれどと、遠慮しいしい頼んでみます。

すると即座に、花咲きみだれる庭付一戸建て出現!

 

ラブリーなおうち。ああ、すてき! 今までの古ぼけた寝台や食器棚が、やけにみすぼらしく見えます。

やはり一式そろってリニューアルしてもらわきゃねえ。そもそも家具付きの家って、お願いしたつもりだったんだけど…。

と、このあたりから、だんだん強気になってくるおばあさん。

マホガニーのテーブルに、天蓋付きのベッド、そして洋服ダンスについていた鏡で、おばあさんは、生まれて初めて自分の姿を見ます…。

あらまあ、なんてみじめな……。

ということで、おばあさんも全身リニューアルして、奥様に変身〜!

 

とても身につまされる欲望スパイラルな展開です。

もとのお話であるイギリスの昔話では、よくばりなおばあさんにお仕置きが待っているのですが、物語の名手ルーマー・ゴッデンによる再話の結末は、ちょっとちがいます。

なんでも手に入りそうな豊かな現代、「わたしはこれでじゅうぶん」といえる幸せを、いったい何人の人が手にしているのでしょうか。

挿絵も、たくさん描きましたので、くすくす笑い、じんわり、ぼんやり考えながら楽しんでいただければうれしいです。

 

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