わたしの本のこと

翻訳絵本

いつまでいっしょ

いつまでいっしょ

クリストファー・チェン 文 スティーブン・マイケル・キング 絵 国土社

 

パンダさんと、ネズミちゃんは なかよし。

ネズミちゃんが強い風に飛ばされそうなときや、山道をのぼるときには、パンダさんが手をつないでくれます。

 

ネズミちゃんは、ちょっと考えて訊ねます。

「こわいお話をよむときも、手をつないでくれる?」

「川をわたるときにも、手をつないでくれる?」

パンダさんの返事は、「もちろん」。

 

ネズミちゃんは、もっと考え込みます。

「わたしが、ぷりぷり怒っているときも?」

「なにかいけないことをしちゃっても?」

パンダさんは、くすっと笑って、うなずきます。

パンダさんて、ほんとにやさしい。

どんなときにも、あたたかく寄り添ってもらえるネズミちゃんは幸せですね。

 

でもネズミちゃんは、さらに考え込むのです。

それっていったい、いつまでなんだろう…と。

 

 

親子の会話のようでもあり、恋人の会話のようでもあり。

作者のクリストファーさんは、この本を長年連れ添った亡妻に捧げているようです。

 

翻訳中のエピソードは、こちらからどうぞ。

http://chihiro-nn.jugem.jp/?eid=152

 

編集は、杉本真美さん。

初のお手合わせでしたが、細かなところに気を配り、丁寧に本作りをしていただきました。

とくに表紙カバーの色出しについて奮闘していただいたようで感謝です。

淡く微妙なスモーキーピンクに、ご注目を!

 

装幀は、岡本明さん。

いくつかだしていただいた案からも、繊細でお洒落なセンスが伺えました。

(おかげで原書よりだいぶ素敵になりましたよ〜 ヒソヒソ)

 

おじいちゃんのねがいごと

おじいちゃんのねがいごと

パトリシア・マクラクラン 文  クリス・シーバン 絵  光村教育図書

 

野鳥を愛したおじいちゃんが老いて次第に視力を失い、亡くなるまでの日々が、孫娘の回想によって綴られています。

 

編集者氏が帯のテキストに「鳥を愛する祖父をめぐるささやかなできごと、そして別れ。」と書いてくれたとおり、ほんとうに、ささやかなできごとばかり。

 

パトリシア・マクラクランの文章は、そっけないほど淡々としています。

翻訳者としては「もちょい盛り上げましょうか?」と提言したくなるときもあるけれど、そうしないのがマクラクランです。

 

抑制の効いたひとこと、いやむしろ、あえて語られない物事や行間に、なんと深いものが流れていることか。

おじいちゃんとおばあちゃんの、夫婦としてのありかた。

若い訪問看護師への、さりげない思いやり。

そしてなにより、もしかしたらちょっと生き辛いかもしれない、でも、うまくいけばきっと素晴らしい人生を歩むであろう幼い孫への、深い愛情。

 

人の命と営みは、ささやかで、儚い。

それを包む自然は、雄大で美しく、厳しい。

しずかな音楽を聴いているようなきもちになります。

 

83歳になるパトリシア・マクラクランですが、テキストを深読みして迷路に入ってしまった私が質問状を送ると、すぐに返事をくださいました。

滋味豊かな作品を、まだまだ世に出してほしいものです。

 

クリス・シーバンの絵本を翻訳するのは2回目ですが、この人の絵は黄昏色が綺麗。

 

翻訳途中のブログは、こちらからどうぞ。詳しい内容のチラ読みもできます。

http://chihiro-nn.jugem.jp/?eid=134

 

編集は、相馬徹さん。

「くまちゃんがちいさくなっちゃった」のときは、すべてリモート打ち合わせでしたが、今回は、いちどだけ、対面打ち合わせができました。

やっぱり、対面で会えると、そのあといろいろ楽ちんだなあ…。

人となりがわかって安心感があります。

 

装幀は、森枝雄司さん。

年季の入った あうんの関係なので、何があっても処理してくださる安心の大船です。

  

くまちゃんがちいさくなっちゃった

くまちゃんがちいさくなっちゃった

トム・エリヤン 文  ジェーン・マッセイ 絵   光村教育図書

 

あかちゃんのときに、大きなクマのぬいぐるみをもらった ぼく。

あかちゃんのぼくには、くまちゃんが大きすぎて、いっしょに遊ぶのも一苦労。

 

 でも ぼく、おおきな くまちゃんが すき。

 かぜが ふいても、あめが ふっても、ぼくを まもってくれるから。

 

そして あるとき、ぼくは、あんなに大きかったはずのくまちゃんを、ひょいと抱けることに気がつきます。

 

 あれっ、くまちゃんが ちいさく なってる。

 

いやいや、ぼくが大きくなったんですよね…。

ぼくは、ちょっと複雑な気分で、くまちゃんに囁きかけます。

 

 ぼくと おんなじ おおきさに なっちゃったね、くまくん。

 でも ぼく、ぼくと おんなじ おおきさの くまちゃんが すき。

 ふたごの きょうだいみたいだもん。

 

ぼくは、いつだって、その時々のくまちゃんの魅力を見いだします。

 

けれど月日が流れ、ぼくは どんどん成長していきます。

くまちゃんは、どんどん小さくなっていきます。

 

そしてやがて、別れがやってきます。

子どもの本の世界のお決まりコースですよね。

 

でも、この最後がとてもよい。

絵本ならではの爽やかな風がふきます。

大人の読者と子どもの読者、それぞれにちょっと異なる味わいをのこす一冊だと思います。

 

翻訳途中のブログに、もう少しいろいろ書きました。

うちのぬいぐるみ写真なども、こちらからごらんください。

http://chihiro-nn.jugem.jp/?eid=126

 

編集は、相馬徹さん。

彼がまだ若いお兄さんだった頃に名刺交換をしましたが、初のお手合わせ。

今はパパになっていて、息子くんの存在が翻訳にもよい影響を与えてくれました。

装丁は城所潤さんと、館林三恵さん。

甘くなりすぎずに品の良いしあがりです。

 

ハロウィンのかぼちゃをかざろう

ハロウィンのかぼちゃをかざろう

パトリシア・トート 文  ジャーヴィス 絵  BL出版

 

  まず はじめに

  かぼちゃを えらびましょう。

  どれに しますか?

 

      ずっしり おもたい かぼちゃを くるまに つんで

  はやく いえに かえりましょう。

  さあ、いよいよ これからが おおおしごとです。

 

本物のかぼちゃを買ってきて、ジャックオランタン、つまり、ハロウィン用のかぼちゃ提灯を作る方法が楽しく描かれます。

臨場感のあるわくわく気分を追体験するうちに、用意する物や、注意点、ちょっとしたコツやヒントもわかるところが、なかなかニクい。

 

む? この展開はしってるぞ…と思った方はいますか?

はい、『クリスマスツリーをかざろう』は、姉妹本です!

 

なによりも秋の深い色調がとても綺麗な一冊。

今年のハロウィンは、魔法の力をもつ特別ななかぼちゃを作ってみませんか。

親子で静かに炎をみつめるのも良いものですよ。

 

この本を訳していたときのエピソードは、こちらからどうぞ。↓

 http://chihiro-nn.jugem.jp/?eid=110 

 

編集は、内田広実さん。

装丁は鈴木美緒さん。

 

 

マザーテレサ

マザーテレサ

マリア・イサベル・サンチェス・ベガラ 文  ナターシャ・ローゼンバーグ 絵  ほるぷ出版

 

  むかし、こまっている人や 動物を みかけると、

  かならず たすけてあげる やさしい女の子が いました。

 

まるでおとぎ話のように、幼い子どもが親しみをもてる主人公のお話として始まります。

ノーベル平和賞を受賞した聖女マザーテレサも、はじめは小さな女の子だったのですから。

「子どもがはじめて出会う伝記絵本」として欧米で刊行されている Little People BIG DREAMS (小さなひとりの大きなゆめ)シリーズ。

日本では、ほるぷ出版から刊行される一作目です。

  

バルセロナ出身の著者 マリアさんは、幼い姪たちに、みずから道を拓いて夢をかたちにした女性たちのことを伝えようと本をさがし、愕然としたそうです。

女性を扱った本が、ほとんどないじゃないか……と。

なければ作ろう精神で始まったのが、このシリーズ。

 

幼い子どもが理解できる平易な文章にしよう。

絵はいろんなイラストレーターに頼んで、楽しくカラフルにしよう。

これまでの「偉人伝」でとりあげられなかった素敵な女性たちの物語を沢山しよう。

 

ところが、シリーズの評判があがるにつれて、こんどは逆に「どうして男の人の話がないの?」と悲しむ読者の声が届くようになりました。

そこで、ふむ、あえて男性を排除するのも変よね…となったとか。

ちょっとおもしろいですよね。

 

 

翻訳者としては、偉大で複雑な人物の生涯を、ミニマリズム的文章でまとめなくてはならないことに苦吟しきりでした。

本文は小学校低学年を想定したやさしい言葉の物語ですが、巻末には中高学年以上を想定して、ちょっと詳しい解説をつけています。

こちらは日本人の翻訳者たちが、各自がんばって執筆しているんですよ。

 

とても評判のよいシリーズで、欧米ではすでに40冊以上が出版され、現在も続刊中。

日本では、おもに学校図書館に配本されるそうですが、いっぱい出せるといいなあ…。

 

編集は、ほそえさちよさん。

いつも世界の「今」に目をむけている闘士&同志なので、打ち合わせがたのしいです。

装丁は、森枝雄司さん。

シリーズ全作担当。表紙の背にある黒い布目模様をどこまで目立たせるべきかなど、繊細かつ遊び心のある仕事をしてくれます。

 

メイキング話は、こちらからどうぞ。

私がマザーテレサと会ったときのことも書いています。

① http://chihiro-nn.jugem.jp/?eid=106
② http://chihiro-nn.jugem.jp/?eid=122


 

ちいさなしまの だいもんだい

ちいさなしまの だいもんだい

スムリティ・プラサーダム・ホールズ 文  ロバート・スターリング 絵  光村教育図書

 

 あるところに、どうぶつむらが ありました。

 ひつじ、うま、うし、ぶた、あひるや がちょうたちが

 それぞれ すきなところに いえを たて、

 めいめい とくいな しごとを うけもって、

 たすけあいながら くらしていたのです。

  

ところがあるとき、ガチョウたちが文句をいいはじめます。

よそものがいない昔のほうが、ずっと住み心地がよかったんですって。

むかしは 林檎がもっと赤くて、草ももっと緑だったんですって〜。

あの頃にもどろう!

古き良き時代を取り戻そう!

声高に、議会で熱く演説をするガチョウたち。

大声でまくしたてられると、つい納得しちゃうってことありますよね。

 

かくして民主的な多数決の結果、よそものの排斥が決定。

ガチョウと同じ島でくらすアヒルたちは反対をしたのですが、少数派の意見は通りません。

ちいさなしまは 鎖国状態となります。

 

さて、それからガチョウとアヒルたちに何が起きたでしょう?

くすくすにやにや笑いながら読みおわると、胸にツブツブと何かが残ります。

それはたぶん、問題提起のタネ。

 

この絵本は、2019年秋にイギリスで出版されました。

イギリスのEU離脱がテーマです。

偏狭な自分主義をとなえるガチョウたちは悪者扱いですが、本音まるだしでユーモラスで、なんだか憎めない。

じつはわたくし、しぶんの心にもガチョウが住んでいることに気づいてしまいました。

100%アヒルだと思っていたのになあ。

だけどそれは、良い気づきのはず。

ガチョウの言い分にも耳を傾けられるアヒルをめざします。

 

新型コロナウイルス騒動は、わたしたちが人や物ばかりかウイルスまでも自在に、そして即時に往来するグローバルな時代を生きていることをあらためて意識させました。

地球人すべてが大きな運命共同体。

この時代を生きていく子どもたちといっしょに読んでほしい本です。

多数決で負けたアヒルですが、さいごの頁をみると、ガチョウよりアヒルの雛のほうが多いんですよ〜♪

 

 

編集は、鈴木真紀さん。

『せかいでいちばんつよい国』以来のおつきあいで、心の中のガチョウ談義も白熱。

装丁は、森枝雄司さん。

「訳者あとがきに大切なことが書いてあるから、文字はこれ以上小さくしません!」と主張してくれてありがとう。 

 

メイキング裏話は、こちらからどうぞ。

http://chihiro-nn.jugem.jp/?eid=102

http://chihiro-nn.jugem.jp/?eid=105 

 

 

ひみつのビクビク

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フランチェスカ・サンナ作 廣済堂あかつき                      ME and my FEAR

 

   ちいさな ビクビクは

 わたしだけの ひみつの ともだち。

 

そう始まるので、イマジナリーフレンド(想像上の友だち)の話だろうとおもいますよね。

たしかに、おばけちゃんみたいな、かわいい友だちです。

 

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でも、この友だちの名前は「ビクビク」。

主人公の女の子は、なにかを怖いとおもうきもちを、そう呼んでいました。

夜のくらがりや、吠える犬に怯えるたびに、心の中の「ビクビク」を意識するのです。

 

女の子は、じぶんの「ビクビク」を恥じてはいません。

怖いと思うからこそ慎重になり、ほんとうに怖い目にあうことを避けられるし、ちょっとずつ冒険をして強くなれるとしっているから。

聡明な子ですね。

 

ところがあるとき、ビクビクはむくむく、むくむく、大きくなりはじめます。

女の子が夜も眠れず、ごはんもたべられなくなるほどに。

やがて巨大化したビクビクにがんじがらめにされて身動きとれないほどまでに。

 

でもね。

このあとの展開が素敵なのですよ。

ようやくビクビクが手におえるサイズまで小さくなったとき、女の子は気づくのです。

誰もがみんな、ひみつの「ビクビク」をもっていることに…。

 

新学期や、転入学など、新しい環境に身を置く子どもたちに読んでもらいたいと思います。

 

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この重苦しいきもち。おぼえがありますよね〜。

冷たい雨の朝なんて、ほんと、憂鬱だわぁ…。(-_-)

でもじつはこの絵本、もうすこし社会的な広がりをもってもいるのです。

 

あえて説明をくわえずにさらりと訳しましたが、女の子のビクビクが増大したのは… 

 

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そう。

どうやら女の子は、外国に転校したらしいのです。

親の海外転勤や留学だったのかなど、背景はかいてありません。

著者フランチェスカ・サンナの第一作が『ジャーニー 国境をこえて』であったことを思うと、無一物で命からがらやってきた難民だったのかもしれません。 

今回、具体的な事情があまり語られないのは著者の意図のように思います。

それでこそ読者は気づくはず。「あれ?  みんな、おなじなのかな」と。

 

クラス替えなどでじぶんの「ビクビク」に気づいた子どもたちが、心にひそむ怯えを客観的にとらえられるようになり、やがては、ニュースに流れる難民の子どもたちの状況をしなやかに思いやれる人になりますようにと、願いながら翻訳をしました。

 

冒頭にある献辞がすてきなんですよ。 

 

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じぶんのビクビクを子どもにみせたお父さん。

どんな事情があったのでしょう。

いろいろ想像すると切ないけど、かっこよくて勇ましいじゃありませんか。

そして本の裏表紙にかかっている帯は、こんなふう。

 

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教育、そして外国人の子どもたちを支援する活動にたずさわる大人の方達にも、ぜひ読んでいただきたい一冊です。

 

制作途中のおはなしは、こちらから。

http://chihiro-nn.jugem.jp/?eid=64

http://chihiro-nn.jugem.jp/?eid=70

 

編集は、いつだって絵本をめぐる視野の広さに驚かされる ほそえさちよさん。

装丁は、中嶋香織さん。タイトル文字がちょこっと震えているところにご注目。

 

 

ノロウェイの黒牛

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さとうゆうすけ 絵  BL出版

 

スコットランドの昔話です。

しっとりとした雰囲気の、ふしぎな恋の物語。

 

BL出版の「せかいのむかしばなし」シリーズは、まだあまり知られていない昔話を日本人画家の絵で絵本にする意欲的な企画。

その5冊目になります。

 

わたしが翻訳依頼をうけたのは2年2ヶ月前。

でも、それより前に編集者と絵描きの間で話し合いが行われていました。

つまりこれは、編集者が、さとうゆうすけさんの絵に惚れて始まった本づくりなのです。

翻訳依頼のメールには、さとうさんがかいた黒牛とむすめの絵が添えられていました。

 

むかしばなしは、再話者によって、ずいぶん違うものです。

「ノロウェイの黒牛」は、まだ定まっていないところが多いようで、いろんなバリエーションがあります。

さとうゆうすけさんの絵にあう再話をさがすことからはじめましたが、結局のところ、石井桃子さんも訳されたフローラ・アニー・スティールの再話を底本とすることに決定。

 

そのうえで、絵本のページめくりに合わせて文を切ったり、置き換えたりするなど、変更の自由を確保するために、「訳」ではなく「文」としていただいたのです。

日本語を選んでいくときにも、さとうさんの絵を思いうかべて、ことばをさがしました。

脚本家が俳優を想定してセリフを書く、芝居の「当て書き」のようなかんじですね。

 

あとはひたすら、絵ができるのを待ったわけですが…。

ああ、やっぱり昔話の絵本化はむずかしい。

頭をかかえてしまうことも何度かありました。

さとうゆうすけさんは、もっと苦しんだことでしょう。

でもそのたびに、ひとつひとつ、新しい地平がひらけていったように思います。

誠実で、丁寧なお仕事ぶりでした。

さとうゆうすけさんの、堂々の絵本デビュー作です。

   

制作途中の記事は、こちらからどうぞ。 

http://chihiro-nn.jugem.jp/?eid=39

http://chihiro-nn.jugem.jp/?eid=62

http://chihiro-nn.jugem.jp/?eid=65

http://chihiro-nn.jugem.jp/?eid=68

 

編集は、14年前に『あめあめ ふれふれ もっとふれ』(のら書店)で初々しく担当をしてくれた 鈴木加奈子さん。編集力のさらなる向上と成熟ぶりが、嬉しくてたまらない…(^o^)

装丁は、表紙回りの美しさはあたりまえとして、本文レイアウトで底力に瞠目の 中嶋香織さん。

 

クリスマスツリーをかざろう

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パトリシア・トート 文 ジャーヴィス 絵  BL出版

 

  まず はじめに

  木を

  えらびましょう。

  

  ほっそり のっぽの木?

    まんまる ふとっちょの木?

  どの木も とっても いい におい!

 

ほんものの木を買ってきて、一年でいちばんとくべつな木=クリスマスツリーにするまでのときめきを綴ります。

幹をノコギリで少し削ったほうがよいとか、お水はたっぷりあげましょうとか、オーナメントをかざる順番や、よりいっそう楽しむためのコツやヒントが色々しるされているので、これはもはや「実用書」。

なにはともあれ、豆電球のあかりを点すのは、いちばん最後にしてくださいね。

部屋の電気をけして、まっくらになったことを確認したら、みんなで息をひそめて、……ぱちり!

この瞬間に、クリスマスの魔法がかかるんですって。

メリー・クリスマス!

 

この本を訳していたときのエピソードは、こちらから↓

http://chihiro-nn.jugem.jp/?search=%A5%AF%A5%EA%A5%B9%A5%DE%A5%B9%A5%C4%A5%EA%A1%BC

 

編集は江口和子さん。

装丁は「めいちゃんの500円玉」も担当してくれた鈴木美緒さん。

原書タイトルの飾り文字がみごとに日本語として再現されています。

てのひらのあいさつ

てのひらのあいさつ

ジェイソン・プラット 文  クリス・シーバン 絵  あすなろ書房

 

近年、若い男性がひとりで赤ちゃんをつれて電車に乗っている姿をみるようになりました。

いい風景です。

 

赤ちゃんや幼い子どもにとって、父親の広い胸や大きなてのひらは、母親のそれとはまた違う安心感があるはず。

言葉以前につたわってくる愛情は、とても尊い。

一般的に、父親は母親ほど、言葉でうまく愛をつたえられないようですし。

そんなお父さんならではの、シンプルで深い愛の歴史です。

 

編集は、山浦真一さん。

装丁は、城所潤さん+岡本三恵さん。

 

翻訳中のブログ記事は、こちらからどうぞ。

http://chihiro-nn.jugem.jp/?eid=113

 

 

いつか あなたが おおきくなったら

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エミリー・ウィンフィールド・マーティン 作  サンマーク出版

 

  わたしを みつめる 

  ひとみを みつめて

  わたしは ゆめみる

  あなたは これから

  どんな すてきなひとに なるのだろう

 

そう始まるこの絵本は、まだ生まれてまもない子どもたちへの祝福と期待に満ちています。

これからどんな個性が芽生え、どんな人生を歩むのかと思いをめぐらせながら幼子をみつめるときの、しんとした喜び。

いちばん素敵な文章は、さいごに置いてあります。

見守る大人の、なによりもたいせつで暖かな覚悟として。

 

 

見返し紙につかったのは包装紙ですって。つるつるつやつやだけど素朴な手触り。

紙の本ならではの魅力ですね。 

 

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見返しをめくると、この本を贈りたいひとの名前を書く欄があります。

年月日の欄は、日本語版オリジナルで加えてもらいました。

 

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後半には左右にひろげるページ(観音開き)があります。

観音開きをつくるのって、難しいんですよ。

くちゃっと折れないように、めくりやすいように、とじやすいようにと、制作スタッフが試行錯誤をしてくれました。

あけてびっくり。おもわず笑っちゃうような絵が広がります。

作者エミリーさんの、直球のようでいて変化球かもしれない世界をお楽しみください。

 

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制作途中のおはなしは、こちらから ↓

http://chihiro-nn.jugem.jp/?eid=50

http://chihiro-nn.jugem.jp/?eid=63

 

編集は、初手合わせながら響きのよさが頼もしかった 平沢拓さん。

装丁は、安心で美味しい(^o^) 水崎真奈美さん。

 

そらは あおくて

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シャーロット・ゾロトウ 文  杉浦さやか 絵  あすなろ書房

 

アメリカ黄金期の絵本を多くてがけた名手、ゾロトウの未訳作品です。

 

五才くらいの女の子が、古いアルバムをみて、たずねます。

 

  「このこ、おかあさんなの?」

  「そうよ、おかあさんが いまの あなたと おなじころ」

 

着ている服や、お人形、くらしの風景がどれほど変化しようとも、かわらないのは母の願い。

写真のなかの時代を遡りながら、4世代の少女のくらしと、それを見守ってきた母たちの姿が穏やかに綴られます。

 

 

原書には、ガース・ウィリアムズが絵をつけていました。

古典の香りはあるものの、いささか古めかしすぎるので、このたび、杉浦さやかさんの絵で明るく可愛く生まれかわって日本上陸です。

 

じつは、この普遍的な物語を未来へとつなげるために、少々、細工をしました。

原書の初版は1963年です。

その時点で五才の女の子から4世代を遡ると…

 

  むすめ 1958年生まれ 

  母   1920年代生まれ

  祖母  1890年代生まれ

  曾祖母 1860年代生まれ

 

でもこれじゃあ、いま、この絵本を読む五才の子どもにとって「むかしばなし」ですよねえ。

じぶんのお話として読んでほしいので、2世代ほど現代に引き寄せました。すなわち…

 

  むすめ 2013年生まれ

  母   1980年代生まれ

  祖母    1950年代生まれ 

  曾祖母   1920年代生まれ

 

よ〜し!

ところが、ここで悩みが生じました。

 

原書にあるアメリカの4世代は、社会風俗が激変した時代。

子ども時代の曾祖母は、馬車に乗っていたのです。

 

その変化をきわだたせるためか、原文では四人の女の子の家の「くるま」を比較していました。

けれども2世代ぶんをたぐり寄せてしまうと、ひいおばあちゃんは馬車にのっていません。

マイカーの型式変遷だけじゃ、あんまり魅力的でもないし…。

悩んだ末に、版元にも相談して、「くるま」を「おみせ」に変えました。  

 

  おかあさんが こどものころは 

  こんな ふくを きて、 

  こんな おにんぎょうで あそんで、 

  こんな おみせで おかいものを したの。 

  そして こんな いえに すんでいたのよ。

  (…ほんとは、① dress、② doll ③ car! ④ house だったのです…)

 

この設定をもとに、杉浦さやかさんがせっせとお得意の資料収集に励んだ結果の楽しさを、どうぞじっくりごらんください。

 

制作途中の裏話は、こちらから→http://chihiro-nn.jugem.jp/?eid=54

 

編集は吉田亮子さん。

装丁は「サンタクロースのおてつだい」も担当してくれた わたなべひろこさん。

見返し紙の質感がすてきです。

101ぴきのダルメシアン

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ドディ・スミス 原作 ピーター・ベントリー 文 スティーヴン・レントン 絵 光村教育図書

 

白黒水玉もようの犬が101匹といえば、ディズニー映画。

アニメ版も実写版も、大ヒットしましたね。

 

じつは、あの映画には原作本の児童文学がありました。

作者のドディ・スミスが愛犬のダルメシアンを主人公にして書いたお話なので、いろんな犬種がたくさんでてきて、犬好きのツボをつかむ読みでのある本です。

でも長い。かなり長い…。

 

本書は、それをギュギュッと 短くまとめた イギリス発の絵本です。

絵柄としては、やはりディズニーを意識しています。

このクルエラの顔なんて、実写版の101そっくり〜。

(頭の白髪と黒髪を左右反対にして、ささやかに抵抗していますが…w)

 

訳文も、テンポのよいエンタテインメント性を追究しました。

かわいい子犬たちのドキドキハラハラ大冒険をお楽しみください。

 

 

この本の関連記事は、こちらから。→http://chihiro-nn.jugem.jp/?eid=42

 

編集は、鈴木真紀さん。

装丁は、城所潤さんと岡本三恵さん。

エンタメ路線に走っても、安定の品の良さです。 

 

 

あかちゃんがどんぶらこ!

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アラン・アールバーグ 文  エマ・チチェスター・クラーク 絵  徳間書店

 

さわやかな初夏の朝。

子どもたちは、あかちゃんを乳母車にのせて、浜辺にあそびにいきました。

たくさん遊んで、おべんとうをたべて、あかちゃんのおせわも、ちゃんとしました。

 

でもね。

凧の糸が ぷちんと切れてしまったのです。

そりゃもちろん、みんなで追いかけていきますよねえ。

 

そのすきに、あかちゃんの乳母車が そろりそろりと うごきだし……

波が ざぶーん ざぶーんと打ち寄せて……

あかちゃんは どんぶらこっこと うみの うえ!

 

ああ、なんてこと!

でも 心配ご無用。

あかちゃんには お人形たちが ついています。

お人形の ウサギくんと おぼうしちゃんと パンダさんは、かいがいしく あかちゃんのおせわをしました。

 

大海原の上の 小さな乳母車の 小さな冒険。

はらはらどきどきするけど、くすくす笑えます。

もちろん、大団円のハッピーエンド。

めでたし めでたし。

ふう、おやすみなさい。

 

アールバークの わらべ歌のような、あるいは紙芝居の語りのようなリズムの文章を意識しながら翻訳しました。

ぜひ、声にだして読んでみてください。

 

ところで、タイトルに「どんぶらこ!」を使おうと提案したのは、硬派YA小説の編集で名高い上村令さんです。

いわく「どんぶらこという表現は、べつに桃太郎の専売特許時ありません」だって〜 (^o^)!

 

この本のメイキング話は、こちらからどうぞ↓

http://chihiro-nn.jugem.jp/?eid=31

 

ちっちゃい おおきい おんなのこ

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クレア・キーン 作絵 ほるぷ出版

 

ちいさな女の子のマティスにとって、海は 大きい。空も 大きい。

世界の なにもかもが大きくて、マティスは とっても ちっちゃい。

だけど、ちいさなマティスには、みっちりと命がつまっています。

 

そして あるとき、マティスに 弟が うまれます。

うわあ、ちっちゃい!

あれ? もしかして、マティスは おおきくなったのかな?

 

弟や妹がうまれるときの不安や複雑な思いは、この絵本のテーマではありません。

とことんポジティブ。

そうだよねえ、新しい命、のびゆく命って、そういうものだよねと微笑ましくて、おもわず口もとがゆるんでしまいます。

うんうん、たのみますよ、ちっちゃい おおきい おにいちゃん、おねえちゃんたち。

 

この絵本のメイキング過程を書いた「ときたま日記」もあわせてどうぞ↓

 http://chihiro-nn.jugem.jp/?eid=16 

 http://chihiro-nn.jugem.jp/?eid=26

いっしょにおいでよ

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ホリー・M・マギー 文  パスカル・ルメートル 絵  廣済堂あかつき

 

テレビのニュースをみて、こわくなってしまった女の子。

テロやヘイトスピーチなどの映像を見てしまったようです。

こわばった表情で、おとうさんにたずねます。

「こんなのって いやだ。どうしたらいいの?」と。

 

幼い子どもにそうたずねられたら、大人はなんて答えればよいのでしょう。

「子どもは心配しなくていいよ」と言ってしまいそう…。

でも、それでほんとうに不安は消えるでしょうか。

 

たとえ、どんなにささやかでも、じぶんにできることをする。

そして、同じ思いのだれかと手をつなぐ。

そのほうが不安は和らぐはず。いろんなことが、きっと良い方向へまわりはじめるはず。

 

南米には、一羽のハチドリが小さなくちばしに水滴をふくんで山火事をけそうとした昔話があるそうです。

むだなことをと笑われたハチドリは「わたしにできることをしているだけ」と答えたとか。

近年、環境問題を考える人びとのあいだで「ハチドリのひとしずく」はよく語られるようになりました。

 

絵をかいたパスカルは、「この本はぼくにとって、ハチドリのひとしずくだ」と言っています。

わたしにとっても、小さな小さな、けれどたいせつなひとしずくです。

だれかに届きますように。

 

この本の制作過程については、「ときたま日記」をごらんください。

http://chihiro-nn.jugem.jp/?eid=7

http://chihiro-nn.jugem.jp/?eid=19

http://chihiro-nn.jugem.jp/?eid=25

 

 

 

 

 

 

 

ずっと 

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ケイト・クライス 文  サラ・クライス 絵   WAVE出版

 

エリは、うまれたときから、犬のバロンとくらしてきました。家族として。

エリが六才になったとき、バロンはもう おじいちゃん。

残された時間は多くないことに、エリは気づきます。

 

ペットと子どもの別れを描く絵本はいくつかありますが、この本が一味ちがうのは、エリのきもちとバロンのきもちが微妙にすれちがっていることでしょう。そこが文学的。

エリはバロンのために、いろんなことをやってあげたい。あれも、これもと欲張ります。

読者としては、ちょっとハラハラして、えー、それちがうでしょと、エリに注意をしたくなってしまいます。

だけどやっぱり、それでよかったようです。

 

翻訳しながら、O・ヘンリーの賢者の贈り物を思い出しました。

きもちのボタンの掛け違いは、はたからみると、ちょっと滑稽。

それでも濃やかに通うものがある関係というのは、人と人のあいだでも、動物とでも、おなじような気がします。

家族って、きっとそんなもの。

 

この本の依頼をうけたとき、一瞬ためらったわたしに、浜本律子編集者がつぶやきました。

「悲しい本じゃないと思うんです」。

 

訳し終えて、そのとおりだと思います。

幸せな本です。

 

この本の制作裏話は、こちらをお読みください。

http://chihiro-nn.jugem.jp/?eid=13

http://chihiro-nn.jugem.jp/?eid=22

 

 

サイモンは、ねこである。

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ガリア・バーンスタイン作 あすなろ書房 

 

シンプルなかわいい絵本だけれど、風刺とメッセージがちゃんと隠れています。

しかも押しつけがましくなく、ゆかいな砂糖衣にくるんで。

こんなふうに大人も子どもも重層的にたのしめる絵本がだいすきです。

 

ちなみに、あすなろ書房のY編集者からいただいた翻訳依頼のメールは「ねこ、お好きですか?」でした。

うふふ、うちには、かわいいハンジがいるのよん。

(サイモンと、耳の方向がぎゃくだけど)

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たくさんのお月さま

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ジェームズ・サーバー 文  ルイス・スロボドキン 絵  徳間書店

 

福武書店で児童書編集部をたちあげた二人の編集者が、徳間書店に移って児童書を始めたときの企画のひとつ。

「たくさんのお月さま」はすでに、いろんな画家の絵、いろんな訳者で刊行されていましたが、スロボドキンの絵によるオリジナルの絵本は未刊行だったのです。

帯に「スロボドキンの絵は本邦初」のような文章をおさめて入稿しようという矢先に、かつてほんの一時期、光吉夏弥さんがこの絵本を出版されていたことを知りました。あら、たいへん!

貴重な1冊が大阪の国際児童文学館にあるときき、新幹線で大阪へ。

書庫からだされたのは、まさに、これと同じ絵本。

終戦直後の印刷事情のわるい時期に出版されたため、小さくて、紙も粗悪で、印刷文字も曲がったり欠けていたり。

でも、それゆえにこそ、戦後の日本の子どもたちへの熱い思いが感じられました。

そして光吉さんの訳文は、サーバーの文章の難解な部分も誤魔化さずに平易なことばへと噛み砕くなど、終始、子どもたちのほうをむいた配慮がこまやかで、ほんとうにすばらしいものでした。

かけだしの翻訳者としては、その文章を読まないうちに翻訳をすませることができてよかったと胸をなでおろすばかり。

同時に、光吉夏弥さんたちの文章をよんで子ども時代をすごせたことを、しみじみと感謝したのです。

 

 

どうぶつがすき

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パトリック・マクドネルド 作絵  あすなろ書房

 

原題は " Me...Jane"。

「わたし、ジェーン」って感じでしょうか。

どうぶつがだいすきな女の子ジェーンの物語。

ジェーンは、おとうさんからチンパンジーのぬいぐるみをもらい、動物と自然への興味をはぐくんでいきます。

にわとりが、どうやって卵をうむのかをしりたくなり、鶏小屋に何時間も潜伏し、とうとうその瞬間を目撃。自然の驚異にいっそう魅了されます。

愛読書は「ターザン」。ターザンの恋人の名前もジェーンですしね。

いつかアフリカにすみたいな。

たくさんの動物たちとなかよくなりたい。

 

ジェーンはその憬れをずっとずっと大切にして……、ふむ、どうなるのかなと絵本の頁をめくると、えっ? なにこれ!?

読者の目は、点になるはず。

わたしもそうでした。

 

これは高名な動物学者ジェーン・グドールの子ども時代を描いたユニークな絵本なのです。

「おおきな ゆめの ちいさな はじまり」

ほんとうに帯のことばのとおり。

 

日本絵本賞 翻訳絵本賞をいただきました。

この本について、もうちょっと詳しく書いた記事は、こちら。

http://www.kodomo.gr.jp/kodomonohon_article/918/

 

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ソーニャのめんどり

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フィービー・ウォール 作絵  くもん出版

 

ふわふわのひよこを三羽わたして、おとうさんがソーニャにいいました。

「ひとりで せわを してみるかい?」

 

ソーニャがよく世話をしたので、ひよこはすくすく育ち、卵をうんでくれるようになりました。

ところがあるばん、一羽がきつねに襲われてしまいます。

かなしみと怒りで混乱するソーニャをしっかりうけとめて、おとうさんは静かに話しはじめます。

もしかしたら、きつねにも、おなかをへらした子ぎつねたちがいるのかもしれないよ、と。

 

  おとうさんが ソーニャを かわいがるように、

  ソーニャは ひよこたちを かわいがっていた。

  きつねも おんなじなんだよ。だから いのちを かけて まもるんだ。

  ソーニャなら、きつねの きもちも わかるんじゃないかな。

 

若いアメリカ人作家の、1作目となる絵本です。

こっくりとした色彩。パッチワークのような手芸的で素朴な画風。

とりあえず「小動物の世話をとおして命の尊さを学ぶ本」であることにまちがいありませんが、作者の目線は、そのはるか向こうに投げられています。

ソーニャのおとうさんとおかあさんの肌の色は違います。

近年、とみに排他的なうごきのある世界のなかで、どこの国のどの世代の人びとにも、安直にじぶんの正義をふりかざすのではなく、ふみとどまって考えてほしいという強いメッセージを、わたしは受けとりました。

 

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あきちゃった!

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アントワネット・ポーティス 作絵  あすなろ書房

 

いつだって、

いぬの なきごえは ワン。

ねこの なきごえは ニャー。

カラスは カア。ハトは ポー。

 

世間の常識というのは、そういうものです。

ところがあるひ、スズメとおぼしき茶色いことりは、チュンと鳴くのにあきてしまいました。

どんな歌をうたいたいのかわからないけど、とにかく、チュンではありません。

もっとへんてこりんな歌。たとえば…

アチャピッピ ポケプー!

 

だけど、そんなアバンギャルドな行為は世間に受け入れられません。

仲間の鳥たちに呆れられ、バッシングも始まります。

でもね。いったんは自粛した茶色い小鳥は、6分後にまた、へんてこりんな歌をおもいついてしまったのです。

チュルチュル チュルリン チュリッパ!

だって、おもしろいことって、やめられないんですもの。

 

そんなわけで、原書の半分は辞書にのっていないへんてこりんな英語ばかり。

これってもはや翻訳とはいえない。

とりあえず著者に、なにを基準に日本語にしたらよいでしょうとたずねました。

するとお返事は「読者が笑ってくれることを第一目的に」(^o^)

 

そんなわけで、机にむかって、犬の散歩をしながら、あるいはお皿を洗いながらも、わたしは小声で「アッパラポッケ……ポッポケラッタ……プリプリッペン」と呟いて家族に呆れられたのでした。

 

みなさんも、どうぞ、好きな節にのせてお読みください。

いやむしろ、新たなへんてこりん語にかえちゃうことも大歓迎。

ンチャカチャッチャ♪

 

105にんのすてきなしごと

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カーラ・ラスキン 文  マーク・シーモント 絵  あすなろ書房

 

金曜日の夕がた。

空が暗くなり、街のあかりがともるころ、105人のひとたちが仕事にでかける用意をはじめます。

男の人が92人で、女の人が13人。

まずは全員、お風呂に入ります。シャワーを浴びる人、湯舟でのんびり本を読む人、泡風呂を楽しむ人。

お風呂からあがると、からだをふいて、ひげをそって、バウダーをはたいて。

男の人のパンツは、トランクス派とブリーフ派にわかれます。さむがりの人の下着はとくべつ。靴下にもいろいろあります。ぶきっちょさんや、ずぼらくんもいますね。

女の人のきがえは、もっとめんどうです。パンツ、ストッキング、ガードル、ブラジャー、スリップ…。冷え性対策も怠りません。

でも下着の上に着る服は、みんな白と黒。

 

 おんなのひとのうち、8にんは、くろい ながい スカートを はきました。

 そのうえに、くろい ブラウスか、くろい セーターを きます。

 4人は、くろい ながい ドレスを きました。

 あとの ひとりは、くろいブラウスを きて、

 くろいジャンパースカートを はきます。

 

…なあんていう、おもしろくもない(^_^;)文章が延々とつづくのですが、これがなぜか、絵とあわせて読むととってもおもしろいんですよ。

まさに絵本の醍醐味。

105人の生活を、空からのぞいているような気持ちになります。ささやかな日常がいとおしい。

きがえをすませた105人は、それぞれの家をでて、電車やバスやタクシーや徒歩で、仕事場にむかいます。

 

そこは、大きな音楽ホール。

そう、かれらはオーケストラの音楽家たちでした。

重厚で美しい音が流れはじめます。

ひとりでは到底だせない厚みのある音色が。

 

 

この本は、かつて、すえもりブックスから岩谷時子さんの訳ででていた『オーケストラの105人』の再訳になります。

わたしもむかし、図書館から借りて読んだことがあったのですが、ぶるぶるっと頭を振って、その印象を忘れさり、きもちをあらたに翻訳にとりくみました。

さいごまで悩んだのはタイトルです。

原題は "The Philharonic Gets Dressed"。直訳すれば「オーケストラメンバーがきがえをします」。

そこに「105人」を入れたのは岩谷さんのお手柄です。端的で印象的。さすが!

 

もちろん、そのままは使えません。だけど、105人は使いたい。どうか使わせてください…と、むうむう悩んだ末に『105人のすてきなしごと』としました。

う〜む、敗北感…(-_-)。

ところが読者からは「この人たちの仕事って、いったい何だろうね」とわくわくしながら子どもと読みましたという声をいただきます。

ありがたいことです。

 

ふかいあな

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キャンデス・フレミング 文  エリック・ローマン 絵  あすなろ書房

 

トラに追いかけられて、カエルが穴におっこちました。

 

 ケ、ケロ、ケロ! ケ、ケロ、ケロ!

 ふかい ふかい あな。

 とんでも はねても でられない。

 なんてこったい!

 

カエルをたすけてあげようと、ネズミが手をのばしますが、やはり落ちてしまいます。

なんてこったい!

 

スローロリスがのろりのろりと救助にやってきますが、やはり落ちてしまいます。

なんてこったい!

クマも、サルも、やっぱり落ちてしまいます。なんてこったい!

トラは、これでみんないっぺんに食べてしまえると喜んで、舌なめずり、ぺろぺろりん!

穴の中のみんなは絶体絶命。声をそろえて「なんてこったい!」。

 

ところがそのとき、強力な助っ人があらわれて、一発逆転!

みんなは穴から助け出され、かわりにトラが穴のなか。

こんどはトラがいう番です。なんてこったい!

トラはめそめそ泣いて、たのみます。「みなさん、どうかたすけてください」

 

そしたら、カエルたちが、なんてこたえたと思いますか?

ヒントをあげましょう。

原文では、カエルたちが何度もくりかえす「なんてこったい!」同様、"Oh, no!"です。

みなさんにも翻訳家の苦しみ(と楽しみ)のおすそわけ。(^o^) ふっふっふ。

 

東洋的な絵ですが、アメリカの絵本です。

帯には「最強の読み聞かせ絵本」とあります。

こどもたちに「なんてこったい!」の部分を読んでもらうとたのしいですよ。

マンゴーとバナナ

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ネイサン・クマール・スコット 文  T.バラジ 絵  アートン

 

インドネシアのジャングルに、まめじかのカンチルがすんでいました。

カンチルのなかよしは、さるのモニェ。

元気に遊べば、おなかがすく。でも、たべものさがしは、めんどくさい。

そこで、かしこいカンチルは、いいことを考えました。

マンゴーの木と、バナナの木を育てれば、いつでも実をもぐだけでたべられるはず。

 

やがてマンゴーとバナナがたっぷり実りました。

ところが、さるのモニェは、まめじかカンチルが木にのぼれないのをいいことに、ひとりでたべてしまいます。

サルカニ合戦みたいでしょう。でも、かしこいカンチルがマンゴーをとりかえす方法は、南国的でとても痛快! おおらかな昔話の楽しさに満ちています。

 

この本の絵は、伝統的な更紗の技法で布に描かれています。

巻末に、カラムカリとよばれる古来の技法が写真で説明されていて、ユニークで質の高い絵本です。

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最近、板橋区立美術館で開かれたインド、タラブックスの絵本展に原画が展示されていました。

まさに工芸品のような美しい本で、問い合わせもいただくのですが、出版社がなくなってしまい、手に入りません。どこかでまた出してくれないかしら…。

 

そうそう、主人公の「まめじか」について。

いったいどんな動物かしりたくて、上野動物園のまめじかに、私は会いにいったのでした。

ミニウサギくらいの可愛いシカでしたよ。

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チョコレート屋のねこ

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スー・ステイントン 文  アン・モーティマー 絵  ほるぷ出版

 

小さな村に、チョコレート屋がありました。

チョコレート屋のおじいさんは、きむずかしくて、ひとりぼっち。けっしてわらいません。

お店も古ぼけていて、ほこりをかぶり、ほったらかし。

すべてが投げやりで、さびしくて、たいくつだったのです。

 

あるひ、おじいさんは、チョコレートでねずみを作りました。それをじっと見ていたのは、おじいさんのねこ。チョコレートねずみのしっぽをくわえて、こっそり隣の八百屋にもっていきました。

 

チョコレートねずみをたべた八百屋のおじさんは、なぜか心がうきうき。いいことを思いつきます。

ねこはチョコレートねずみをパン屋にも、花屋にも、もっていきます。

たべた人には、かならず、なにかしらすてきな考えがひらめきます。

そのひらめきが重なっていって、やがて村じゅうに笑顔があふれることになりました。もちろん、チョコレート屋のおじいさんにも。

 

アン・モーティマーの描く猫の絵は、猫好き必見。

ただし、チョコレートがたべたくなるのも必至なので、お覚悟を。(^_^;)

 

もうひとつの見どころは、巻末にあります。

細かい文字で、チョコレート数千年の歴史をぎっしり「チョコレートの話」。

これ、読み応えあるんですよー。

 

チョコレートの原料であるカカオが、古代文明の神々の食べ物だったってこと、しってました?

アステカ帝国の皇帝は、不老長寿の薬としてカカオ飲料を一日50杯ものんでいたそうですよ。

なんと、カカオ豆100粒で、どれい1人と交換できたんですって。

そしてカカオに砂糖をくわえた飲み物が17世紀末のヨーロッパ貴族たちの贅沢品となり、いまのチョコレートのように固形になって庶民がたべるようになったのは、産業革命のときです。

 

この1頁を翻訳するために、わたしは分厚い参考書を何冊も読破し、折しも国立科学博物館で開催されていた「チョコレート展」に編集者Sさんとともに足を運びました。Sさんとの打ち合わせは、有名なチョコレート専門店でショコラショーを飲みながらという甘いおまけつき。ふふふ。

この歴史をしると、チョコレートねずみのふしぎな力についても、なんだかわかるような気がします。

チョコレートの味わいが、ぐっと深まるので、ぜひご一読を

 

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ぶきみな よるのけものたち

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ジアナ・マリノ 作絵  BL出版

 

漆黒の 夜の闇。

目玉だけが きょろきょろ。

目玉の主は フクロネズミ。そして スカンク。

2ひきは、ぶきみな よるのけものが うろついているようだと、にげまわります。

正体がみえないものを怖がると、恐怖はどんどんふくらむものです。

おなじように怯えるオオカミ、そしてクマもやってきて、みんなそろって右往左往…。

さいごに、ぷふふっと笑えます。

このテンポ感、なんだか落語みたい。

  

著者の献辞も しゃれています。

大切な人たちの名前をつらねて「あなたたちが いてくれるから わたしは くらやみが そんなに こわくない」って。そこにピカッと懐中電灯の光があたってるの。いいなあ。

アメリカの若い絵本作家による、視覚的な遊び心あふれる絵本です。

 

しかし、みなさん、この絵本がこれで終わりとおもったら大間違いですぞ。

表紙カバーをはずしてみてください。

な、なんと表紙カバーの裏が登場人物(動物)である「よるのけものたち」、正しくは夜行性動物&薄明薄暮性動物たちの生態図鑑なのだ! ほらほら、みて〜!

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買った人だけの特典ですよね〜♪

てゆうか、この特典、奥ゆかしすぎて、図書館でも扱いに困るだろうし、書店の店頭でも困るだろうし、ネット書店に至ってはサッパリですね。(-_-) だから売れ行きイマイチ。。

訳者としては、この部分の翻訳のために数多の動物図鑑と資料にあたり、相当なエネルギーを注いだので、しくしく…。

でも、作者のジアナが絵本をまるごと楽しもうとした意欲と冒険は大いに評価します。

版元の太っ腹さにもね。(だってお金かかるもん)

 

版元の太っ腹さと奥ゆかしさといえば。

なにしろ漆黒の闇でくらす動物たちの話なので、ほとんどまっ黒な本です。

でも黒いベタ塗りって、印刷・製本としては非常に厄介なんですって。

たしか、二度塗りして、さらに紙どうしがくっついてしまわないようにコーティングが必要ときいたような…(うろ覚えです。まちがってたらゴメンナサイ)。担当編集者の江口さんは、とっても大変だったみたいです。まさに知られざるプロフェッショナル物語。

 

その甲斐あって、できあがりが原書より格段に良い!

日本の職人芸と心意気を感じます。どうぞ、じっさいにお手にとって、ぺろりと皮をむいて、隅から隅まで、ずずーいとごらんくださいませ。

ことりのみずあび

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マリサビーナ・ルッソ 作絵  あすなろ書房

 

  よるです。

  あめが ふっています。

 

都会のビルの上で、小さなことりが雨の大通りをみおろし、小さなつばさをふるわせて、つぶやきました。

 

  あめのひって いやだなあ。ぼく、あめ だいきらい!

 

でも朝になってみれば、おやまあ、いいお天気。

ことりは うれしくなって うたいだしました。

 

  あめが やんだよ、あめが やんだよ。

  みずあびに ぴったりの いいひだよ。

 

ことりは とびたち、アスファルトでおおわれた町のあちこちを、みずあびにぴったりの みずたまりをさがしてまわります。

ちょうど いいみずたまりをみつけて、空から急降下。ちゃっぷーん!

意気揚々と みずあびをはじめるのですが、つぎつぎに邪魔が入るのですよ。ボールがとんできたり、子どもや犬が走ってきたり…!

だって 公園の遊歩道にできた みずたまりなんですもの。

 

こわがりの ちいさなことり。

なんども あわてて にげだします。そのうちに あらまあ、みずたまりがすっかり小さくなってしまいました。

ことりは かなしい こえで うたいます。

 

  みずあびは もう おしまい。きょうは もう おしまいだよ。

 

またこんど雨がふるまで みずあびは おあずけのようです。

ことりは 雨がだいきらいなのに…。

 

ところが…。

うふふ、いいものみーっけ!

都会のことり、けなげで いじらしいなあ。

ささやかだけれど、小さなからだの小さな心臓がトキトキと脈打つのが伝わってくるようなドラマの絵本です。

 

作家のマリサビーナ・ルッソはアメリカの絵本作家。

作品の数は多くありませんが、「ぎょうれつ ぎょうれつ」はやはり、日常のなかのささやかな子どもの喜びをうまくすくいとっていて忘れがたい作品でした。

 

それにしても、わたし、ほんとに「ことり」が好きみたい。ことりの絵本が、ほかにもいろいろありました。

ことりの おそうしき

ロボットと あおいことり

あきちゃった!

ことり だいすき

 

ことりファンのみなさま、どうぞ ごいっしょに。

  ちゃぽちゃぽ ぷるぷるっ!

  ぱちゃぱちゃ ぷるるん!

 

  

あめあめ ふれふれ もっとふれ

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シャーリー・モーガン 文  エドワード・アーディゾーニ 絵  のら書店

 

  しばふに ふりそそぐ 春のあめは、ぽつぽつと やわらかな音。

  どぶにおちる あめは、ぴちゃん、ぽちゃんと、ブリキをたたくような音。

  まどべの子どもたちは、ひんやりしめった 土と草のにおいを くんくんと かぎました。

 

春の雨がふりつづき、女の子と男の子のきょうだいは、もう3日も、外で遊んでいません。

窓から外をながめて、戸外にいる人びとや、花や虫、小鳥や猫や犬をうらやましがるだけ。

わたし、ことりだったらいいのに。猫だったらいいのに。あのおばさんだったらいいのに。

ぼく、じどうしゃだったらいいのに。犬だったらいいのに。新聞配達のおにいさんだったらいいのに。

でもね、さいごには、とてもうれしいことがまっています。

うん、雨の日に、外であそべる子どもがいちばん!

 

絵本といっていいのかなと迷うほどには、文章が長めです。

でもアーディゾーニの絵が大きな牽引力となっているので、やはり絵本かな。

 

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翻訳をしてたのしかったのは、感覚的な表現がとても多いことでした。

雨の日の水の流れや、空気の匂い、光の変化。

特別なことはなにも起きませんが、おとなにとっては幼い日の鋭い感覚がよみがえります。

子どもたちにとっては、かれらが毎日つつまれているふしぎな喜びに、言葉をあてはめる心地よさへとつながるのではないでしょうか。

 

アーディゾーニの絵は、もちろん、地味ですとも。

それゆえにむしろ、多くのことを思い出させてくれるのです。

この味わいを理解してくれる読者と版元のおかげで細く長く版を重ねて、14年間で11刷り。

こういう売れ方が、いちばんうれしい。

 

編集は、鈴木加奈子さん。

装丁は、丸尾靖子さん。

 

サンタクロースのおてつだい

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ロリ・エベルト 文  ペール・ブライハーゲン 写真  ポプラ社

 

とても寒くて、一年中、毛糸のぼうしと手袋がてばなせない北の国に、オンヤという名前の女の子がいました。

もうじき クリスマス。

オンヤは、サンタクロースのお手伝いをしようと心にきめて、さらに北へと旅だちます。

白銀世界の道案内は、小さな赤い鳥。

北へいくにしたがって案内人は、やさしい目をした小馬。ジャコウウシ。そして白熊へとバトンタッチ。

そしてとうとう、オンヤはサンタクロースにあって、お手伝いをするのです。

どんなお手伝いかって?

それは、そりを牽くトナカイたちに号令をかけること。

いやあ、爽快です。そりにつながれたトナカイたちにむかって、大きな声で…

「とべ!」

 

そのすべてが、なんと、写真で語られています。

そぉ、写真なんですよ〜 !

この本を食い入るように読んで「やっぱり サンタクロースっていたんだぁ…」と呟く子どもたち続出とか…。

 

赤いとんがりぼうしをかぶり、北欧サーメ(ラップランド)の伝統的な衣裳にトナカイ毛皮の靴をはいている愛らしいオンヤは、文を書いたロリと写真をとったペールの娘です。

ロリはスタイリストで、ペールはグリーンランドや北極など、雪と氷の世界の写真をナショナルジオグラフィックなどに掲載している写真家なんですって。ナルホド。

北欧の素朴で美しい衣裳や、扉、木のスキーも一見の価値あり。

もちろん、動物たちも。

 

編集は、仲地ゆいさん。

デザインは、わたなべひろこさん。

綺麗な本にしあげてくださいました。

 

 

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