わたしの本のこと

美術の絵本

いろのダンス

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アン・ジョナス 作絵  福武書店

 

ダンスの発表会です。

赤、黄色、青、そして白黒のレオタード姿の四人の子どもたちが、それそれの色の薄布をもって舞台に登場します。

 

  それでは ダンスを はじめます

  あか きいろ あお

  だいだいいろは あかと きいろを まぜた いろ

  あおは おやすみ

 

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  みどりは きいろと あおを まぜた いろ

  むらさきは あかと あおを まぜた いろ

 

こんなぐあいに、三原色による混色が わかりやすく描かれていきます。

 

  あかに あかを まぜても あか

 

というページもあり、単色濃淡のベールもすてき。

反対に、ぜんぶの色をまぜると…

 

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水彩絵の具のパレットや水入れが暗く濁った経験は、だれにもありますよね。そうか、三原色をまぜたからなんだねと納得できることでしょう。

勘の良い子は、茶色って、赤と青と黄色で作れるんだ!?と 気づくかも。

白や灰色、黒をまぜたときの変化も、ダンサーたちのベールで表されています。

 

はい。

これは徹頭徹尾、実用書、あるいは技法書であります。子どものお絵かきのための。

小学校の学級文庫に収められ、水彩のお絵かきの時間になると「むらさきって、どうやって作るんだっけ?」「いろのダンス、いろのダンス!」と、みんなが見にいく話をききました。

なにより、とてもとても美しい。

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 子どもたちに図工や美術を教えるのは、じょうずな絵をかかせることが目的ではありません。

きれいだなあ…と  心がうごく一瞬があれば、目的は半分以上達成されたというべきでしょう。

それにくわえて、じぶんでもこういう美しいものをうみだしたいきもちが芽ばえたなら、ほぼ目的完遂。

そのとき紙の上の結果に満足しなかったとしても、まったくかまいません。その子は一生、美しいものへの憧れを胸にいだく人になるでしょうから。

教育って、未来への種を蒔くことですものね。

 

とまあ、それくらい大好きな絵本ですが、絶版です。しくしくしく…。