わたしの本のこと

デビッド・マッキーの絵本

メルリック まほうをなくしたまほうつかい

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デビッド・マッキー 作絵  光村教育図書

 

心やさしい、まほうつかいのメルリックは、人間たちのためにせっせと魔法をつかいます。

王さまのプールの温度管理や、お城のペンキぬりから、一般家庭の料理、洗濯、裁縫、畑仕事、靴の修繕まで。

だから忙しいのはメルリックだけ。ほかの人は、のんべんだらりと暮らしていました。

ところがあるとき、メルリックの魔法が底をついてしまったのです。

あらまあ、魔法って有限だったんですね。

魔法に頼りきっていた人々の大混乱がユーモラスに描かれます。

 

作者のデビッド・マッキーは「ぞうのエルマー」で有名ですが、キャラクターグッズの画家ではありません。

エッジのきいた風刺と、社会への問いかけが彼の本領です。

 

この物語が最初に生まれたのは1970年でした。

日本でも『まほうをわすれたまほうつかい』(安西徹雄 訳・アリス館)として紹介されましたが既に絶版。本国イギリスの元の本も絶版です。

 

するとマッキーさんは、すべての絵を新たに描きなおし、2012年に新刊絵本として出版したのです。当時77歳。

なんとしてもこの物語を蘇らせ、次代に手渡そうとした熱い思いが感じられます。

「魔法の力」とは、いったい何でしょう。

震災直後の私の脳内では、ただちに電力と原子力に変換されました。

けれどほかにも、いろいろなものに置き換えることができそうです。復興予算や途上国への支援、石油、財力、ITと考えることも可能かもしれません。

 

さて、わたしたちは、生活を楽にしてくれる「魔法の力」と、どう向きあっていけば幸せになれるのでしょうか。