わたしの本のこと

翻訳絵本

たくさんのお月さま

ジェームズ・サーバー 文  ルイス・スロボドキン 絵  徳間書店

 

福武書店で児童書編集部をたちあげた二人の編集者が、徳間書店に移って児童書を始めたときの企画のひとつ。

「たくさんのお月さま」はすでに、いろんな画家の絵、いろんな訳者で刊行されていましたが、スロボドキンの絵によるオリジナルの絵本は未刊行だったのです。

帯に「スロボドキンの絵は本邦初」のような文章をおさめて入稿しようという矢先に、かつてほんの一時期、光吉夏弥さんがこの絵本を出版されていたことを知りました。あら、たいへん!

貴重な1冊が大阪の国際児童文学館にあるときき、新幹線で大阪へ。

書庫からだされたのは、まさに、これと同じ絵本。

終戦直後の印刷事情のわるい時期に出版されたため、小さくて、紙も粗悪で、印刷文字も曲がったり欠けていたり。

でも、それゆえにこそ、戦後の日本の子どもたちへの熱い思いが感じられました。

そして光吉さんの訳文は、サーバーの文章の難解な部分も誤魔化さずに平易なことばへと噛み砕くなど、終始、子どもたちのほうをむいた配慮がこまやかで、ほんとうにすばらしいものでした。

かけだしの翻訳者としては、その文章を読まないうちに翻訳をすませることができてよかったと胸をなでおろすばかり。

同時に、光吉夏弥さんたちの文章をよんで子ども時代をすごせたことを、しみじみと感謝したのです。